
前回に続き、反転DC/DCコンバータの基礎について取り上げます。まず、前回の内容を簡単に要約しておきます。
1.反転昇降圧比
反転昇降圧比は、デューティーサイクルのみで決まる。
反転昇降圧比=(ON時間)/(OFF時間)=D/(100-D)
Dはデューティーサイクルで、ON時間とスイッチング周期との比率(%)。
引き続き、反転DC/DC回路の基本的な動作特性について、調べた結果を解説します。
2.インダクタ電流
出力側インダクタ(Lb)に流れる平均電流は、反転昇降圧比によらず、出力電流に等しくなります。インダクタ電流が連続的に流れるような条件である限り、出力電流値、インダクタ値、スイッチング周波数などに影響されません。
平均出力側インダクタ電流=出力電流
入力側インダクタ(La)に流れる平均電流は、出力電流と反転昇降圧比のみで決まり、以下のようになります。
平均入力側インダクタ電流=出力電流×反転昇降圧比=入力電流
インダクタ電流の三角波成分(リップル電流)は、昇圧DC/DCコンバータと同様で、インダクタ値に反比例、入力電圧に比例、デューティーサイクルに比例、スイッチング周波数に反比例し、出力電流には関係しません。
3.過渡応答
反転DC/DCコンバータの過渡応答は、SEPIC回路とは異なり、それほど複雑ではありません。結合コンデンサの両端に接続されているトランジスタスイッチとダイオードが交互にONする回路となっており、2個のインダクタと結合コンデンサが一つの共振回路を形成することがないためです。
前回、「反転DC/DCコンバータは、昇圧DC/DC+負出力チャージポンプ+降圧DC/DC(ローパスフィルタ)と考えられる」と述べましたが、昇圧DC/DC部分の動作と降圧DC/DC部分の動作が切り離されているわけです。
従って、出力電圧の変動は、降圧DC/DCと同様に、出力側インダクタと出力コンデンサで形成される共振回路に誘起された減衰振動と考えられます。昇圧DC/DC部分に発生した減衰振動は、降圧DC/DCの入力変動と考えればよいわけです。
反転+SEPIC
反転DC/DCコンバータとSEPIC回路は、「見た目」だけでなく、昇降圧比の特性も似ていますので、一つのローサイドスイッチ、または、昇圧用DC/DCコンバータICで両電源回路を構成できます。シミュレーション回路を参照してください。出力電圧安定化のためのフィードバック回路は、プラス側かマイナス側か、どちらか一方にならざるを得ませんので、フィードバックのない方の出力安定度は悪くなりますが、後段にリニアレギュレータを使う場合など、あまり厳しい要求がなければ実用になると思います。少なくとも、対称性を持った「美しい」回路ですので、ぜひ「鑑賞」されることお勧めします。
個人的見解ですが、「美しい」回路は、「優れた」回路であることが多いのではないか、と思っています。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。