
前回、オシロスコープでスイッチングノイズを観測する際に、プローブのグランドリードが「悪さ」をする例を紹介しましたが、解決策については、特に示しませんでした。よい方法を思いつかれましたでしょうか。あるいは、正しく評価できる方法を「常識」として実践されている方もおられることと思います。
このたび、スイッチングノイズを正しく観測するためのいくつかのアイデアについて、シミュレーションで「実験」してみましたので、結果を報告して参考に供したいと思います。
1.スイッチングノイズ観測_A
グランドリードが「悪さ」をするのであれば、「グランドリードをなくせばよい」と考えるのが自然です。そこで、配線長を1/10(10mm)にして、寄生インダクタンスを10nHとしてみました。それだけでは、リンギング周波数が高くなっただけでしたが、ダンピング抵抗として10Ωを直列にいれると、かなりよくなります。それならば、最初からダンピング抵抗だけでよいのでは?と、ツッコミが入りそうですが、寄生インダクタンスが大きいと、抵抗値も大きくしなければなりません。ダンピング抵抗と寄生容量とでローパスフィルタが形成されますが、この周波数が低くなるほど、肝心のスパイクノイズに影響する度合いが高くなります。
2.スイッチングノイズ観測_B
そもそも、プローブがないほうがよいのでは?ということで、50Ωで片側のみ終端した同軸ケーブルでオシロスコープと接続した場合を想定し、第7回で紹介した、同軸ケーブル1mの近似回路を使っています。さらに、スイッチングノイズ観測に特化して、コンデンサ結合としました。公平を期するため(?)、回路との接続部分に10nHの寄生インダクタ(10mmの配線長に相当)を入れ、オシロスコープの入力容量として10pFも入っています。信号遅延、レベル減衰、反射らしき波形が見られますが、相対的なノイズ評価には十分役に立つと思いますが、どうでしょうか。
3.スイッチングノイズ観測_C
50Ωで両側を終端した同軸ケーブルの場合です。片側終端に比べて、減衰は大きいですが、波形は「素直に」なっているようです。大した手間でもありませんから、両終端とすべきでしょう。「得体のしれない難物」を相手にするときは、少しでも不確定要素を減らすことが肝要です。
4.スイッチングノイズ観測_D
こんな時は、高速FETプローブに限る、と言われても、高価でもありますから、気軽に使えるとは限りません。それなら、高速バッファを自作してしまいましょう。驚くことはありません。エミッタフォロアにすれば、汎用のトランジスタでも、そこそこの性能は出るものです。あまり欲張らずに、スイッチングノイズ観測のみを目的とするならば、それほど困難ではありません。エミッタフォロアの出力は50Ω両終端の同軸ケーブルでオシロスコープに接続します。結果は、同軸ケーブルで直接接続した場合とほとんど同じとなりました。今回のケースでは、回路の出力インピーダンスが十分に小さいため、バッファの効果は見られませんでしたが、汎用トランジスタのエッミタフォロアの実力を再認識させられました。
上記の結果をまとめると、スイッチング電源の出力でのスイッチングノイズ観測には、両終端の同軸ケーブルでオシロスコープに接続するのが良さそうだ、と言えそうです。したがって、試作時には(可能ならば)接続用のパッドくらいは設けておくべきではないでしょうか。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。