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第32回:容量性負荷

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第32回:容量性負荷

オペアンプの応用回路には、多くの種類があります。もっとも簡単な、ゲイン1の非反転アンプ回路(バッファ)から、帰還ループに種々の素子を接続し、面白い機能を持つ巧妙な回路まで、電子回路技術の一分野をなしています。

多種多彩な応用回路があるとはいえ、実際の使用例でみると、単純な反転、または、非反転アンプ回路が圧倒的に多いのではないでしょうか。現在では、オペアンプIC自体の技術的進歩のお蔭で、手軽に、低コストで目的を達成できる場合がほとんどでしょう。

見かけが単純なアンプとはいっても、「負帰還増幅」という「高度な技術」によって実現されているわけですから、しばしば、動作が不安定になり、発振してしまうこともあります。いかにオペアンプICが進歩したといっても、理想オペアンプではないわけですから、使う上で留意すべき点は押さえておかなければいけません。このなかで特に注意すべきは、容量性負荷を駆動する場合です。

今回は、ゲイン1の非反転アンプで容量性負荷を駆動した時の動作と、安定化対策について取り上げました。「出力にコンデンサなんかないから関係ない」と思った方、その出力をケーブルで外部に引き出していませんか?

回路図に示されていなくても寄生容量は「必ず」存在します。どのくらいの寄生容量を見込むべきか、一概には言えませんが、不安定になる方向に作用することは間違いありません。

シミュレーション回路を参照してください。バッファのみで駆動する回路と、安定化の対策をした回路を2種類、示しています。実は、このほかにCRの直列回路(スナバ回路と呼ばれることが多い)を追加する方法があるようですが、その定数の決め方を知りませんし、使ったこともありませんので、割愛しました。私の力不足をお許し願うと同時に、どなたかご存じでしたら、ぜひ、ご教授をお願いします。

なお、使用しているオペアンプの型番については、こだわらないようにお願いします。一般的なオペアンプと同様な、典型的な傾向を示すものを選びました。

さて、まずは、バッファのみの回路でステップ応答を見てください。負荷コンデンサ(CL)の値を変化させると、容量の増大に伴い、リンギングが大きくなり、不安定になっていく様子が見てとれます。慣れている方は、周波数特性も見てください。振幅応答にピークが現れ、位相が急変する特性となっていることが確認できます。

安定化の対策としてもっとも簡単な方法は、出力に直列抵抗を一本追加するのみです。典型的には10Ω~100Ω程度の値であり、出力短絡、その他、過渡状態での外部回路の保護などを兼ねることもできますので、とくに、基板外に出力する場合の実用設計としては、ほぼ必須といってもよいと思います。

「抵抗一本」ですが、見事な「働きぶり」を見せてくれます。ステップ応答、周波数特性ともに「素直な」挙動となり、安定化の効果を実感できます。

抵抗のみの対策法は、簡単ですが、副作用としての欠点もあります。出力に抵抗が入る、つまり、出力インピーダンスが大きくなるため、負荷に電流が流れると、出力電圧が変動して誤差が発生してしまいます。これが無視できないときには、もう一工夫した対策回路とする必要があります。右端のシミュレーション回路に示しているように、CFB、RFBを追加します。

この定数値の決め方を述べておきます。RFBは、RFB≧10×RO、CFBは、CFB×RFB≧2×CL×ROとなる値を出発点として、実機、あるいは、シミュレーションでの「カットアンドトライ」が実践的です。シミュレーション回路の定数を変化させて、試してみてください。結構「ラフ」な設定でも十分であることに気付かれると思います。

この回路は、だいぶ以前に、バーブラウン社(現TI社)の分厚いデータブックで知り、その後、何度か使った実績もあります。「積極的に」コンデンサを配置し、バッファの出力側でローパスフィルタを構成する目的にも使えるなど、お勧めできる回路の一つです。

今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。

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