
オペアンプには、多種多様の応用回路があります。その中には、誤差増幅器やコンパレータ的な使い方もありますが、最も多く使われている応用回路は、負帰還を掛けた反転アンプ、または、非反転アンプでしょう。
アンプ回路の設計で重要なのは、要求される回路仕様に適したオペアンプICを選択することです。この選択にあたって考慮すべき点については、次回以降に改めて解説するとして、ここでは、オペアンプICが既に選択されているとします。反転アンプのゲインGは、帰還抵抗値をRFB、入力抵抗値をRINとすると、G=-RFB/RINとなることはご存じと思います。非反転アンプならば、G=1+RFB/RINです。
つまり、必要なゲインが与えられていても、帰還抵抗値と入力抵抗値の比は計算できますが、抵抗値そのものは決まりません。例えば、G=-1の反転アンプ、あるいは、G=2の非反転アンプの場合、RFBとRINを同じ抵抗値とすればよいのですが、100Ωとするか1MΩとするか、理想オペアンプとしての基本的な動作原理だけを考えている限り、答えは得られません。
まず、帰還抵抗値の違いによって回路特性がどのように変化するかを見てみましょう。付属のシミュレーションファイル「反転アンプ_帰還抵抗値.asc」、「非反転アンプ_帰還抵抗値.asc」を参照してください。入力抵抗値=帰還抵抗値として、10Ω~10MΩまで10倍刻みで変化させた回路を収めてあります。
抵抗値過大
抵抗値が大きい方では、1MΩ、10MΩで発振しています。AC解析で周波数特性を見てください。ゲイン特性にピークがあり、位相特性が急変しています。この発振の原因は、オペアンプICの反転入力端子の入力容量による位相遅れです。現実の回路では、実装に伴う寄生容量も加わります。
ここで、簡単に発振対策を示しておきます。帰還抵抗に並列に位相補償コンデンサCcompを追加します。容量値は、入力容量をCin、実装に伴う寄生容量をCpとして、以下の値にします。
Ccomp =(Cin+Cp)×(RIN/RFB)
発振対策のシミュレーション回路は割愛しますが、興味のある方は、試してみてください。
余談ですが、「帰還抵抗に並列にコンデンサを入れてローパス特性を持たせたが、計算より帯域が伸びていた」経験はありませんか。入力容量(と寄生容量)の影響です。特に、帰還コンデンサの値が10pF程度以下の小さい値の場合には注意が必要です。
抵抗値過小
抵抗値が小さい方では、100Ω、10Ωで出力が飽和しています。これは、オペアンプICの出力電流に制限があるためです。
これらの結果から、10KΩあたりが妥当な帰還抵抗値のようですし、数KΩ~数10KΩくらいまで、選択の幅はありそうです。ただし、これは、シミュレーションで使っているオペアンプICをゲインG=-1(G=2)の回路とした場合についての結論であって、他のオペアンプIC、または、異なるゲインの回路であれば、異なった抵抗値となり得ます。
より一般的な、アンプ回路での抵抗値の目安をつける方法については、オペアンプICの選択方法とともに、別の機会に取り上げたいと思います。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。