
オペアンプを使った反転/非反転アンプは、定番と言ってよい回路で、皆さんも馴染みがあると思います。帰還抵抗と入力抵抗(ゲイン設定抵抗)の値によって、ゲインを計算できますので、設計が容易です。「釈迦に説法」になりますが、ゲイン計算式を示しておきます。
反転アンプ:G=-RFB/RIN、非反転アンプ:G=1+RFB/RG
さて、アンプのゲインを切り替える必要があるときには、帰還抵抗RFBか、入力抵抗RIN(ゲイン設定抵抗RG)のどちらかを適切な値の抵抗に切り替える方法と、固定ゲインのアンプとアッテネータ(抵抗分圧)を組み合わせる方法があります。可変ゲインアンプICもありますが、やや特殊なICではないでしょうか。
今回、私が過去に採用したゲイン切り替え回路を紹介して、実機製作に配慮した考え方の一例を解説します。昨今では普通になった「デザインレビュー」の真似事と思って、お付き合いください。
アンプ全体は、非反転アンプと反転アンプの2段構成で、非反転アンプのゲイン5、10、20倍(2倍ステップ)、反転アンプのゲイン2、4、8、16、32倍(2倍ステップ)、ゲインはジャンパ切り替え(手動、半固定)です。信号周波数は40KHz程度の正弦波を想定しています。
シミュレーションファイル「非反転アンプのゲイン切り替え回路.asc」を参照してください。オペアンプICは実際に使用したオペアンプICとは異なりますが、シミュレーションでの確認に支障のない範囲で同等です。
ゲイン5、10、20ですので、RFB/RGは、4、9、19であることが必要です。これをE24系列抵抗で実現するために、この回路のように、RGを300Ω固定とし、かつ、RFBを直列接続にして切り替えています。他の定数では、無視できない誤差が出るか、抵抗本数が増えてしまいます。なお、実際の製作時、抵抗には0.5%品を使いました。高精度の抵抗も入手が容易になってきましたが、ほとんどE24系列の抵抗値のようです。
次の反転アンプでも同様ですが、300Ω(3KΩ)を基本に考えると、E24系列であってもかなりの自由度が得られるようです。また、ジャンパの共通側をオペアンプの出力に接続している点にも注意してください。こうすることで、RFBを直列接続構成としたことと相まって、反転入力端子の配線を最小となるように配慮しています。寄生容量による不安定動作は厄介ですので、転ばぬ先の杖です。
シミュレーションファイル「反転アンプのゲイン切り替え回路.asc」を参照してください。RFBを固定とし、RINを切り替えています。周波数特性を変化させないためにこのような方式としました。RFBを切り替えて、周波数特性を一定にするには、各RFBに並列コンデンサが必要となり、部品点数が増加します。しかも、コンデンサの容量値は種類が少ないため、自由度がありません。
入力抵抗RINは、直列接続構成で、基本定数値は3KΩです。1.5 KΩ、750ΩはE24系列値です。唯一、2倍の6KΩはE24系列にないため、3KΩ+3KΩで合成しています。12 KΩを2本並列とすることも考えられますが、実装の容易さからこのような回路としました。(ユニバーサル基板に手実装でした。)
このような直列接続構成とし、ジャンパの共通側を入力に接続することで、非反転アンプの場合と同様、反転入力端子の配線が最小となります。
今回紹介した回路は、取り立てて自慢するようなシロモノではありません。もっとスマートな方式もあると思いますが、「3KΩ」は記憶に留めておいて損はないと思います。1/10の抵抗分圧回路ならば、27KΩと3KΩでピッタリです。他の値では、誤差を認めるか、部品点数を増やすしかありません。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。