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第77回:各機器・装置の性能を左右する測定値の電圧信号変換における分解能とノイズの関係性

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第77回:各機器・装置の性能を左右する測定値の電圧信号変換における分解能とノイズの関係性

①電圧信号における分解能とは

種々の量を電気信号に変換して測定することは、電子技術の重要な応用の一つです。測定結果は、適切な表示をする、制御ループに入力する、など、各機器・装置ごとに異なりますが、測定そのものの質(測定性能)の良し悪しが、各機器・装置の性能に直結します。

測定性能には、いくつかの項目がありますが、ここでは、分解能について考えてみます。「分解能とは何か」は、説明するまでもないと思いますが、不安のある方は、広辞苑などで調べてください。

測定値は、最終的に(適切なレベルの)電圧信号に変換することが一般的です。これは、アナログ信号のまま使う、ADコンバータに入力する、など、後段の処理に都合がよいからです。

得られた電圧信号での分解能とは、識別可能な最小電圧差、または、検出可能な最小電圧値ですが、結論を以下に示します。

分解能≧ノイズ電圧(Vpp)

分解能は、ノイズレベルで決まってしまいます。例えば、高分解能のADコンバータを使っても、システムとしての分解能を改善できるわけではありません。

シミュレーション

付属のシミュレーションファイルには、簡素化したデモンストレーションとして、ノイズが重畳した信号をコンパレータに入力して処理する回路を収めてあります。

シミュレーションファイル「分解能とノイズ_デモ_1.asc」は、基準電圧が0Vと1Vの、2つのコンパレータに単調に増大する電圧信号を入力しています。基準電圧の差1VをADコンバータの最小電圧差(1LSB)と見做してください。ノイズの代用として0.5Vpp、1Vpp、2Vppの正弦波を重畳しています。

ノイズが大きい場合、コンパレータの出力が安定せず、ADコンバータであれば、最下位ビットがバラついて、分解能が十分得られない状態です

シミュレーションファイル「分解能とノイズ_デモ_2.asc」は、1Vの矩形波を入力しています。コンパレータの基準電圧は、0.5Vです。ノイズの代用として0.98Vpp、1.02Vpp、2Vppの正弦波を重畳しています。

ノイズが1Vpp未満の場合は、コンパレータ出力に信号が検出されていますが、ノイズが1Vppより大きくなると、コンパレータの出力は不定状態となり、信号を検出できていません。

2Vppのノイズが重畳した信号を見てください。人間の目には、信号があることが見て取れるのです。なぜでしょうか。これは、全体を見ている、すなわち、長時間に渡る多数の情報を脳内で処理しているためです。一方、コンパレータは、瞬間、瞬間の電圧値のみで判定しています。

この「現象、錯覚」は、肝に銘じておくべきです。オシロスコープでノイズが大きい(S/N比が十分でない)信号を見て、「これならイケル」と思っていても、出力が安定しない(分解能が足りない)結果となる恐れがあるからです。

②今回のまとめ

原理的には、分解能=ノイズレベルでよいのですが、実用設計の場合、安定動作などを考えると、「余裕」を持たせたくなります。私の個人的な感覚では、分解能=ノイズレベルの2~3倍くらいを目安としていますが、妥当な「余裕」は、やはり、個別に判断すべきです。

次回、いくつかの具体例について、分解能を見積もってみたいと思います。

今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。

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