
電気・電子回路におけるRCフィルタとRLフィルタを用いたインダクタとコンデンサの関係性
①インダクタについて
インダクタ(コイル)は、抵抗、コンデンサと同じく、電気・電子回路の基本要素ですが、無線関係など、一部の方を除けば、「あまり馴染みのない部品」ではないでしょうか。しかしながら、最近では、DC/DCコンバータなどのスイッチング電源が一般化したため、インダクタも徐々に「メジャーな部品」になりつつあるようですので、インダクタに「慣れておく」ことは、無駄ではないと思います。
②インダクタとコンデンサの電気的な比較
インダクタの電気的振る舞いを考えれば、コンデンサと同等とみてよいでしょう。大まかに言えば、「コンデンサと逆の特性」と言えます。厳密性に欠けますが、「文学的表現」をすれば、次のようにまとめることができます。
コンデンサ回路に対する「式」、あるいは、「動作」の電流と電圧を入れ替えると、インダクタ回路の「式」、「動作」になり、また、交流に対するインピーダンスは、「コンデンサは周波数に反比例」、「インダクタは周波数に比例」となります。
具体的な回路でコンデンサとインダクタを比較するため、(最もシンプルな回路である)RCフィルタを考えてみましょう。ここでは、RCフィルタについては、理解されているものとします。
RCフィルタの遮断周波数fcは、
fc=1/2πRC
です。これは、「コンデンサのインピーダンス(の絶対値)が抵抗と等しくなる周波数」という条件、
1/ωC=R (ただし、ω=2πf)
から得られる結果です。
同様にして、RLフィルタの遮断周波数を計算しましょう。インダクタのインピーダンス(の絶対値)が抵抗と等しくなる周波数の条件は、
ωL=R (ただし、ω=2πf)
ですから、遮断周波数は、
fc=R/2πL
となります。RCフィルタと比較しやすい形に変形すると、
fc=1/2π(L/R)
となります。この形にすると、時定数については、RC回路ではτ=RCですので、RL回路ではτ=L/Rであることが容易にわかります。
シミュレーション
シミュレーションファイル「RC_RL_LPF_周波数特性.asc」を参照してください。R=10KΩとして、遮断周波数fc=1.6KHz、16KHz、160KHzのLPFをRC回路、RL回路で実現しています。コンデンサとインダクタでは、周波数に対してのインピーダンスの変化は逆になりますから、RC回路では、入力と直列に抵抗が配置されていますが、RL回路では、入力と直列にインダクタを配置します。当たり前ですが、全く同じ特性が得られています。
シミュレーションファイル「RC_RL_LPF_矩形波応答.asc」では、同じ定数のLPF回路に矩形波を入力したときの応答波形を確認できます。当然のことですが、こちらでも、RC回路とRL回路は全く同じ応答です。
今回のまとめ
さて、RLフィルタは有用なのでしょうか。私自身は、使ったこともありませんし、見かけた記憶もありません。入手できる部品の質(サイズ、コスト、特性など)を考えれば、RCフィルタの方がかなり有利と思われます。よほど特殊な要求がない限り、RLフィルタを採用するのは「趣向」の範囲が多いようです。
インダクタといえば、やはり、LCフィルタではないかと思います。そこで、次回はLCフィルタを取り上げる予定です。内容としては、「定番回路の確認」になると思います。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。