
電気・電子回路におけるオペアンプ応用回路 -移相回路からの展開(3)-
①はじめに
前回、移相回路からの展開、応用として、2次のフィルタとすることを取り上げ、フィルタ回路を少し変形することで必要な条件を満たすことを「発見」しました。その後、このフィルタ回路を調べてみたところ、再び「発見」がありましたので、時系列的な「シミュレーションによる回路実験」で報告をしたいと思います。
②移相回路からの展開、応用
片終端LC2次フィルタ+非反転アンプ
2次の変形LCフィルタ回路を使って移相回路を構成し、RCフィルタを使った、オリジナルの移相回路と特性を比較しました。
シミュレーション
シミュレーションファイル「LC_移相回路.asc」を参照してください。RCフィルタ、LCフィルタの遮断周波数は、同じ1KHzとしました。LCフィルタの抵抗値は、片終端抵抗値の2KΩを分割した、1KΩとしてあります。
特性は、見事に一致していますし、位相変化も同じです。2次フィルタを使っているのですから、位相が2倍変化するとか、変化の仕方が急峻であるとか、何らかの違いがあるものと予想していましたので、驚きました。配線の間違いなども見当たりません。
このシミュレーション結果を素直に受け入れると、「変形LCフィルタ回路は、RCフィルタと等価である、すなわち、1次フィルタである」となります。
このにわかには理解し難い現象を確認するため、フィルタそのものの特性を比較してみました。
シミュレーション
シミュレーションファイル「RC_LC_フィルタ特性比較.asc」を参照してください。
これを見ると、片終端抵抗2KΩのLCフィルタは、2次特性ですが、分割した1KΩを使った変形LCフィルタは、RC1次フィルタと全く同一の1次特性となっています。抵抗値を変えた回路も収めてありますが、それらは、遮断周波数付近の振る舞いに差はあるものの、高域の減衰特性は1次の減衰特性です。
次に、片終端抵抗2KΩの分割比を変えて、2次特性から1次特性にどのように変化していくのか、観察しました。
シミュレーション
シミュレーションファイル「変形LCフィルタ_抵抗分割比.asc」を参照してください。これによると、コンデンサに僅かな抵抗が入るだけで、高域の減衰特性が1次特性となるようです。
今回の定数例であれば、RCフィルタのRをR+Lに、CをC+Rに置き換えても同じ特性になることがはっきりしましたので、この際、思いつく回路で、この入れ替えをしたらどうなるか、試してみようと思いました。
オペアンプ+R+Cで構成される回路として、積分回路があります。とにかく、機械的に入れ替えた回路を構成して、特性を調べました。
シミュレーション
シミュレーションファイル「変形LC_積分回路.asc」を参照してください。見事に、同じ積分特性です。定数を変えたものも収めてありますので、鑑賞してください。
1次ローパス特性の反転アンプもオペアンプ+R+Cで構成されるポピュラーな回路ですから、これも入れ替えを試してみました。 シミュレーションファイル「変形LC_反転アンプ.asc」を参照してください。同じ1次ローパス特性が得られました。
今回のまとめ
ここで、冷静に考えてみると、LCを使う以上は、2次特性の回路を目指すべきでしょう。次回は、LCとオペアンプを使った、2次特性回路を取り上げてみたいと思います。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、アナログ・デバイセズのサイトよりLTspiceをダウンロードしてご利用下さい。
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