
電気・電子回路におけるオペアンプ応用回路 -レベルシフト(2)-
目次
①はじめに
前回、反転アンプでのレベルシフトを取り上げましたが、今回は、非反転アンプのレベルシフトを考えてみます。比較しやすいように、同じ入出力条件にしています。
②レベルシフトの具体例
非反転アンプ、入力0V±0.1V、出力2.5V±1V
両極性信号を5V単電源オペアンプ回路で増幅することを想定した設定です。
シミュレーション
シミュレーションファイル「レベルシフト_非反転_入力0V±0.1V.asc」を参照してください。
入力振幅±0.1Vを出力振幅±1Vに増幅するのですから、ゲインは10倍です。非反転アンプ基本回路のまま(レベルシフトなし)では、出力は0V±1Vとなっています。
シミュレーション回路では、理想オペアンプ回路ですから、そのまま出力されていますが、実際の5V単電源オペアンプでは、当然、0V以下はクリップされて出力されません。
出力の中心電圧値を0Vから2.5Vに「持ち上げる」ためには、オペアンプの+入力端に電圧を印加する必要があります。しかし、反転アンプの場合と異なり、非反転アンプでは、+入力端は信号が入力されていますから、レベルシフト用の+入力を追加拡張しなければなりません。
拡張のための最も簡単な回路は、抵抗加算回路です。2本の抵抗値(および比率)には、任意性がありますが、ここでは同じ抵抗値(10KΩ)としています。この抵抗値の加算回路では、出力は抵抗分圧により1/2に減衰しますから、非反転アンプのゲインは20倍にしなければなりません。
この設定とすることで、加算回路の入力端からオペアンプ出力までのゲインは10倍となります。レベルシフト用の入力端から出力へのゲインも同じく10倍ですので、2.5Vシフトするためには、2.5V/10=0.25Vを印可すればよいことになります。
前回の反転アンプの場合と同様、差動アンプ構成によって、レベルシフトを実現できます。非反転アンプの場合には、極めて有用な方法です。ゲイン10倍の差動アンプを構成し、Vin-は入力の中心電圧値0Vとし、Vin+に入力を接続します。Vref入力には、出力の中心電圧値2.5Vを印加します。この状態で、目的とする出力となっています。注目すべきは、入力の中心値、ゲイン、出力のレベルを独立に設定可能であることです。
非反転アンプ、入力1V±0.1V、出力2.5V±1V
入力信号にDCオフセット1Vが存在する場合です。ある種のセンサ出力など、よく見かける信号形態です。前項と同じく、5V単電源オペアンプ回路で10倍増幅することを想定しています。
シミュレーション
シミュレーションファイル「レベルシフト_非反転_入力1V±0.1V.asc」を参照してください。
入力の中心値1Vが10倍されますから、非反転アンプ基本回路のまま(レベルシフトなし)では、出力は10V±1Vとなっています。
出力の中心電圧値を10Vから2.5Vに「引き下げる」ためには、-入力側に電圧を印加します。シフトさせる出力電圧は、10-2.5=7.5Vです。ゲイン10倍の非反転アンプを反転アンプとして見ると、ゲイン(の絶対値)は9倍ですから、7.5V/9=0.833・・・Vを印可すればよいことになります。
前項と同様に、差動アンプ構成によって、レベルシフトを実現できます。ゲイン10倍の差動アンプを構成し、Vin-は入力の中心電圧値1Vとし、Vin+に入力を接続します。Vref入力には、出力の中心電圧値2.5Vを印加します。この状態で、目的とする出力となっています。
今回のまとめ
差動アンプ構成のレベルシフトでは、2個の電圧源が必要になりますから、この点では、有利とは言えませんが、その特長(入力DCオフセット、アンプゲイン、出力DCオフセットを独立に設定可能)も加味して、採用の可否を判断すべきでしょう。
次回、もう少し複雑な条件のレベルシフトを取り上げてみたいと思います。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、アナログ・デバイセズのサイトよりLTspiceをダウンロードしてご利用下さい。
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