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第127回:電気・電子回路におけるトランジスタ差動アンプ -直線性に関する実験-

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第127回:電気・電子回路におけるトランジスタ差動アンプ -直線性に関する実験-

電気・電子回路におけるトランジスタ差動アンプ -直線性に関する実験-

①はじめに

前回、アナログ乗算器の基本要素として、トランジスタ差動回路について少し掘り下げて調べてみました。その際に、「入力が微少範囲であるため、近似的にリニアな入出力特性となる」と解釈し、それ以上は追求しませんでしたが、今回、トランジスタ差動アンプの直線性についてシミュレーション実験をしてみましたので、結果を報告させていただきます。

②トランジスタ差動アンプの直線性

トランジスタ差動アンプの回路定数は、前回と同じです。入力0V時の差動ペアトランジスタのコレクタ電流は0.5mA、正電源電圧は15V、コレクタ負荷抵抗は10KΩですから、非反転出力、反転出力はともに15V-10KΩ?0.5mA=10Vを中心とした出力になります。差動出力は、0Vを中心とした、(シングルエンドの)2倍の出力です。

入力範囲による直線性の変化

シミュレーション

シミュレーションファイル「トランジスタ差動アンプ_直線性実験_1.asc」を参照してください。

入力範囲±10mVと±50mVの場合を収めてあります。それぞれ、理想的なリニア出力を模擬した電圧源を用意してありますので、同時に表示することで、直線性からのズレを確認できます。

入力範囲±10mVの場合、入力-10mV時の出力は-1.8155128V、入力+10mV時の出力は+1.8161312Vとなっており、正負の対称性は0.1%以下の誤差しかありませんし、差動出力(Vout_Dif_10mV)と理想リニア出力(Linear_10mV)とのズレも僅かです。最大振幅でのゲインは、(1.8161312V+1.8155128V)/20mV=181.5822となっています。

入力範囲±50mVの場合、入力-50mV時の出力は-7.281964V、入力+50mV時の出力は+7.283432Vとなっており、正負の対称性は0.1%以下の誤差であり、±10mVの場合と同等ですが、差動出力(Vout_Dif_50mV)と理想リニア出力(Linear_50mV)とのズレが明らかに大きくなっています。また、S字曲線的な特性のようです。最大振幅でのゲインは、(7.283432V+7.281964V)/100mV=145.65396となっており、±10mVの場合より20%ほど小さくなっています。

入力範囲±50mV時の追加実験

入力±50mVに対する出力特性は、直線性からのズレの様子も含めて、正負の対称性は良いことがわかりました。その点に関しては、「差動出力」という点から納得できそうですが、シングルエンドの出力も調べてみました。

シミュレーション

シミュレーションファイル「トランジスタ差動アンプ_直線性実験_2.asc」を参照してください。

差動出力とシングルエンド出力を比較しやすいように、非反転出力から10Vシフトさせ、さらに2倍増幅した出力を作りました。

この2つの出力(Vout_Dif_50mVとVout_NonInv_Sift_x_2_50mV)を比較してください。ほとんど同一となっています。直線性に関しては、シングルエンド出力も何ら差は無いようです。

共通エミッタに接続されている定電流源の効果も確認してみました。入力0V時に1mAの電流が流れるように14.36522239KΩの抵抗に置き換えてみましたが、定電流源の場合とほとんど同じ特性となりました。今回取り扱っている回路定数では、定電流源の有効性は確認できませんでした。

負帰還の実験

シミュレーション

シミュレーションファイル「トランジスタ差動アンプ_直線性実験_3.asc」を参照してください。

オペアンプ回路のように負帰還をかけて、約10倍のアンプとしてみました。出力レベルを同程度とするために、入力は±0.72Vとしてあります。直線性に関しては改善されているようですが、ゲインが違いすぎるので、有効性の判断は保留せざるを得ないと思います。2段構成にしてゲインを稼いで、100倍以上の負帰還アンプにしなければ、比較できないでしょうが、そうなると、トランジスタ差動アンプ単体の特性では無くなり、今回の実験の趣旨に合いません。トランジスタ差動アンプの直線性についての実験は、ここまでとします。

今回のまとめ

次回のテーマは未定でございますが、取り上げて欲しいテーマがございましたら、ご連絡いただけましたら幸いに存じます。

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