前回、DC／DCコンバータ回路の参考回路をアレンジして、設計の出発点となる回路を得るために、インダクタ値の決め方を提案しました。その方針は、インダクタ電流のリップル電流比率（＝リップル電流／平均電流）を参考回路と同等にするようにインダクタ値を選択することです。
前回に引き続き、入力12V、出力5V、3Aの降圧DC／DCコンバータ回路を参考回路として、いくつかの変更例を取り上げます。参考回路の定数は、スイッチング周波数＝300KHz、インダクタ＝10μH、出力コンデンサ＝22μFです。
【変更例１】入力12V出力5V3Aから、出力電流のみ1Aに変更（再掲）
インダクタ値を10μHから33μH、出力コンデンサ値を22μFから6.8μFに変更すればよい。
【変更例２】入力12V出力5V3Aから、出力電圧のみ3.3Vに変更
シミュレーションファイル「降圧DC／DCテスト_12Vin3.3V3A.asc」を参照してください。出力3.3V3Aとするため、負荷抵抗RLは、3.3V／3A＝1.1Ωにします。出力電圧が3.3Vになるよう、スイッチON時間を手動調整します。シミュレーションファイルには、参考回路、参考回路と同じ定数で出力を3.3Vとした回路、インダクタ値を6.8μH、出力コンデンサ値を33μFとした回路を収めてあります。出力コンデンサ値は、帰還ループの応答に影響が少ないようにするため、L×Cが参考回路と同等となるように選んであります。
インダクタ値が10μHのままでも、リップル電流比率が少し小さくなる程度ですし、6.8μHならば、少し大きくなる程度で、どちらを選んでもよさそうです。このような場合ならば、参考回路と同じ定数とすることをお勧めします。
【変更例３】入力12V出力5V3Aから、出力電圧のみ８Vに変更
シミュレーションファイル「降圧DC／DCテスト_12Vin8V3A.asc」を参照してください。出力8V3Aとするため、負荷抵抗RLは、8V／3A＝2.667Ωにします。出力電圧が8Vになるよう、スイッチON時間を手動調整します。シミュレーションファイルには、参考回路、参考回路と同じ定数で出力を8Vとした回路、インダクタ値を6.8μH、出力コンデンサ値を33μFとした回路を収めてあります。出力コンデンサ値は、帰還ループの応答に影響が少ないようにするため、L×Cが参考回路と同等となるように選んであります。
インダクタ値が10μHのままでも、リップル電流比率が少し小さくなる程度ですし、6.8μHならば、少し大きくなる程度で、どちらを選んでもよさそうです。このような場合ならば、参考回路と同じ定数とすることをお勧めします。
変更例２と変更例３の説明がほとんど同じ内容となってしまいました。結果も同じ10μHのインダクタ値で、定数変更は不要です。これを見ると、降圧DC／DCコンバータで、出力電圧のみ変更する時には、参考回路と同じインダクタ値でよさそうです。ただし、極端な電圧に変更する場合にどうなるかについて、保証できるものではありません。興味のある方は、調べてみてください。
【変更例４】入力12V出力5V3Aから、入力電圧のみ24Vに変更
シミュレーションファイル「降圧DC／DCテスト_24Vin5V3A.asc」を参照してください。入力電圧を24Vとし、出力は5V3Aのままですから、負荷抵抗RLは、5V／3A＝1.667Ωです。出力電圧が5Vになるよう、スイッチON時間を手動調整します。シミュレーションファイルには、参考回路、参考回路と同じ定数で入力を24Vとした回路、インダクタ値を15μH、出力コンデンサ値を15μFとした回路を収めてあります。出力コンデンサ値は、帰還ループの応答に影響が少ないようにするため、L×Cが参考回路と同等となるように選んであります。
インダクタ値が10μHのままでは、リップル電流比率が参考回路と比べて1.5倍近く大きくなっています。インダクタ値を15μHにすれば、参考回路と同等なリップル電流比率となるようです。入力電圧が２倍となっても、インダクタ値は、単純に2倍とはなりません。
次回からは、昇圧DC／DCコンバータ回路の参考回路からの変更例を取り上げます。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。
