
電気・電子回路におけるコンデンサ -DC/DCの出力コンデンサ-
①はじめに
電源回路には、コンデンサが欠かせませんし、そのコンデンサの選定・実装の良し悪しによって、リップルノイズなど、電源出力の質が左右されます。
今回は、特に顕著な影響が見られるスイッチング電源の出力コンデンサと出力リップルノイズについて取り上げてみたいと思います。
②DC/DC回路の出力コンデンサについて
降圧の場合
シミュレーション
シミュレーションファイル「降圧DC/DC_出力コンデンサ_容量.asc」を参照してください。12Vを入力として5V、3Aを出力するDC/DC回路を構成しています。出力コンデンサは、等価直列抵抗/等価直列インダクタンスの無い、理想的なコンデンサとし、10μFを基準に、5μF、20μFに容量値を変えています。
出力リップルを見てください。スパイクノイズの無い「きれいな」正弦波になっていますが、これは、スイッチング素子など、出力コンデンサ以外の構成要素も理想的であるからです。出力コンデンサの容量が変わっても、リップル波形に変化は見られませんが、リップルの大きさは、容量値に反比例しています。
シミュレーション
シミュレーションファイル「降圧DC/DC_出力コンデンサ_RsLs.asc」を参照してください。出力コンデンサに等価直列抵抗Rs、等価直列インダクタンスLsを追加した回路です。ほとんど影響が見られないRs=1mΩ、Ls=1nHを基準として、Rsのみを10倍ステップで増大させた回路、Lsのみを10倍ステップで増大させた回路、RsとLsをともに10倍ステップで増大させた回路を収めてあります。
出力リップルは、Rs、Lsの増大に伴って波高値が大きくなるだけでなく、波形も変化しています。また、RsとLsで、波形変化の仕方が異なっています。
この現象を定量的に解明することは困難ですが、出力コンデンサ以外の要素は理想的ですので、実際の回路との違いは大きいと思われますから、ここでは、波形変化の傾向を観察して、「降圧DC/DC回路の出力リップルノイズは、出力コンデンサのRs、Lsによる影響が大きい」ことを確認してください。
昇圧の場合
シミュレーション
シミュレーションファイル「昇圧DC/DC_出力コンデンサ_容量.asc」を参照してください。5Vを入力として12V、0.4Aを出力するDC/DC回路を構成しています。出力コンデンサは、等価直列抵抗/等価直列インダクタンスの無い、理想的なコンデンサとし、10μFを基準に、5μF、20μFに容量値を変えています。
出力リップルを見てください。スパイクノイズの無い「きれいな」三角波になっていますが、これは、スイッチング素子など、出力コンデンサ以外の構成要素も理想的であるからです。出力コンデンサの容量が変わっても、リップル波形に変化は見られませんが、リップルの大きさは、容量値に反比例しています。
シミュレーション
シミュレーションファイル「昇圧DC/DC_出力コンデンサ_RsLs.asc」を参照してください。出力コンデンサに等価直列抵抗Rs、等価直列インダクタンスLsを追加した回路です。ほとんど影響が見られないRs=1mΩ、Ls=0.1nHを基準として、Rsのみを10倍ステップで増大させた回路、Lsのみを10倍ステップで増大させた回路、RsとLsをともに10倍ステップで増大させた回路を収めてあります。
出力リップルは、Rs、Lsの増大に伴って波高値が大きくなるだけでなく、波形も変化しています。特に、スパイクノイズが際立っています。また、RsとLsで、波形変化の仕方が異なっており、スパイクノイズに対しては、Lsの影響が大きいようです。
上述の降圧DC/DC回路の場合と同様の理由で、ここでは、波形変化の詳細ではなく、その傾向を観察して、「昇圧DC/DC回路の出力リップルノイズは、出力コンデンサのRs、Lsによる影響が大きく、特にスパイクノイズが目立つ」ことを確認してください。
今回のまとめ
次回は、信号系に使われているコンデンサについて取り上げます。
今回取り上げましたサンプルファイルを使うには、リニアテクノロジーのサイトよりLTspiceIVをダウンロードしてご利用下さい。
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